羽生結弦さん、単独公演REALIVEと「限界無き挑戦」を地元宮城で語る

プロフィギュアスケーターの羽生結弦さんが、地元・宮城で単独公演「REALIVE」を振り返るインタビューに応じました。同じ仙台市出身で元プロ野球選手の江尻慎太郎さんを聞き手に、約1シーズンぶりの単独公演のハードさ、体のメンテナンス期間で得た気づき、そして次回公演の構想までを率直に語っています。

出典:khb東日本放送

動画の主な内容

  • 00:03 REALIVE2日間を終えて/初日と2日目の違い
  • 00:59 スピンで顔が内出血、プレッシャーの大きさ
  • 01:14 約1シーズンぶりの単独公演、体力・ペース配分の難しさ
  • 02:25 メンテナンス期間と体に溜まっていたダメージ
  • 03:33 期間中の学び、「肉体のピークはまだある」
  • 04:52 アーティスト面もアスリート面も無限大
  • 05:29 体がしなやかに、ジャンプとスケーティングの進化
  • 06:13 表現とアスリート、両方を同時進行で
  • 07:35 会場のエネルギー、表現特化ではない厳しさ
  • 08:12 次回公演の構想と新しいジャンルの手応え
  • 09:44 完成度は今どのくらい?「0.1%」
  • 10:53 宮城のゆかりの地と「聖地巡礼」への思い
  • 12:33 地元愛のきっかけ、震災とトロント移転
  • 13:50 宮城の魅力、「県内が潤ってくれたら」

要点まとめ

約1シーズンぶりとなる単独公演「REALIVE」を、羽生結弦さんは「初日は最初から飛ばしすぎた」と振り返ります。メンテナンス期間で単独公演のペース配分の感覚が抜けきっていたと語り、1年ぶりのマラソンにたとえながら、2日目に全力を出し切れたことへの達成感をにじませました。

昨年8月から今年3月までの体のメンテナンス期間については、「至るところに爆弾があった」と表現。しかしその期間の学びから、筋肉の質やタイプは人それぞれで、自分の肉体のピークはまだ先にあるはずだと前向きに捉えています。聞き手の江尻さんとは、野球の「164km」「二刀流」になぞらえた掛け合いも交わされました。

表現面だけでなくアスリート面も同時進行で磨いていること、体がしなやかになりジャンプやスケーティングの感覚が変わったことを、羽生さんは具体的に語ります。次回公演は25分間ほぼリンク上に立ち続け、ジャンプをしれっと組み込む新しいジャンルを構想中で、完成度は「0.1%」と笑いながらも確かな手応えを口にしました。

後半は地元・宮城への思いへ。柚葉桜やベルサンピアなど「ゆかりの地」を訪れるファンへの感謝、震災の時期に各地を転々とした経験や2012年のトロント移転を通じて強まった郷土愛、そして「僕がきっかけで県内が潤ってくれたら」という願いが語られています。

REALIVE2日間を終えて

00:03
質問

お久しぶりです。2日間、本当にお疲れ様でした。実際、初日と2日目、どちらが良かったとかありますか?

羽生:いや、もう断然2日目でした。完全に、本当に緊張しました。プロ初登場みたいな感じで。それぐらい緊張していたんです、本当に。

00:38
質問

REALIVE、2日間本当にお疲れ様でした。過酷な2日間だったんだろうなと察するのですが。

羽生:疲れましたけど、やりきれたなという気持ちもあるので、疲れと同時に達成感はすごくありますね。

00:59
質問

スピンであの、顔が内出血されたとか。

羽生:もうめちゃくちゃ内出血もしますし、あとやっぱりストレスとかプレッシャーとかも測り知れないので、やっぱり荒れますね。

約1シーズンぶりの単独公演

01:14
質問

約1シーズンぶりの単独公演ということで、1人で滑りきる、このハードさとまた改めて向き合ったのではないかと思いますが。

羽生:今までの構成とも違いましたし、1シーズン、メンテナンス期間というものがあって、コンスタントにツアーを組んでいなかったからこそ、自分のプログラムの、単独公演の時の体力配分、ペース配分みたいなものが完全に抜けきっていたんです。だから初日は「最初から飛ばしすぎたな」と思ったりとか、いろんなことをまた改めて経験したなという感じですね。

01:59
質問

1年ぶりにマラソンに行って、どのペースで走ったらいいかわからないみたいな感じですかね。

羽生:わからなかったですね。調整しようとするのも疲れちゃうし。でもこんなに皆さんが楽しみに待ってきてくれているのに「調整するって何だよ」というところもありますし。最終的に2日目は全力で全て出し切れたんですけど、やっぱり難しいなとは思いましたね。

メンテナンス期間と体のダメージ

02:25
質問

昨年8月から今年の3月まで、メンテナンス期間を持たれていましたが、相当、体にダメージが溜まっていたのではないかと思います。いかがですか?

羽生:なんか、至るところに爆弾はあったんだろうなという感じはしていて。それが幸いにも大きな爆発を起こさず、なんとかケアをし続け、なんとか騙し続けてきたところも正直あったので。

02:53
質問

「スケートから離れざるを得ない時期があった」と表現されていましたが、それぐらい厳しかったということですよね。

羽生:そうですね。ちょっとスケートをしていると戻らないだろうなというか、本当に体の1個1個を見つめ直して、実際にダメージがどれぐらい溜まっているのかというものも、お医者さんも含めてしっかりと見た上で、これぐらいかなと思って期間を定めました。

期間中の学びと「肉体のピーク」

03:33
羽生結弦

羽生:メンテナンス期間に時間をいただいて、その中で勉強していって思ったのが、筋肉隆々じゃなくても量産できるバッターもいるし、すごく速いピッチャーもいる。でも細身でもすごいスローカーブを投げる人間もいる。人それぞれにいろんな体の特性があるじゃないですか。筋肉的な瞬発力のピークって、ある程度エビデンスは出ているかもしれないですけど、それって野球をめちゃくちゃやった人間がそのデータを取ったのかと言われたら、そうではないと思うんですよね。一般の方を並べて「垂直跳びしてください」「50m走ってください」と言ったようなものだと思っているので。そう考えると、まだまだきっと肉体のピークもあるんだろうなと。

04:32
質問

だから意外と、羽生さんもまだ164km投げられるかもしれない。今から二刀流で、100マイル投げちゃうかもしれない。

羽生:そうですかね。江尻さんに言われるとやりますって言わないといけない(笑)。

04:52
質問

アーティスト面って無限大にあるじゃないですか。

羽生:確かにあります。間違いなく。でもアスリート側の面だってきっと、例えば4回転ジャンプが飛べた、4回転ルッツが飛べた、160km投げられた、そういうのがあるかもしれない。だんだん飛べなくなってきたということもあるかもしれないですけど、それは勝手に思い込んでいるだけな気がするんですよね。勉強しなくなって、アップデートしなくなっただけなんじゃないかなと。だから多分きっと、アスリートの面も無限大にいろいろあるんじゃないかなと思って。

体の変化とジャンプの進化

05:29
羽生結弦

羽生:基本、体が全部しなやかになったなというのはやっぱり思いますね。自分が飛びたいポイントが、少しずつ体に近いところから遠くまで、体が運んでいける感覚が出てきたりとか。ジャンプの高さを上げるにしても、今まですごく脚力を使ったり、お尻の筋肉を使って上がっていたものを、より効率よく、遠心力であったり体の連動性を使ってジャンプができる。スケーティングだったり基礎的な部分に関してもかなり影響が出ているので、パッと見でわからないところはもちろんあると思うんですけど、体感としての自分の感覚は全然違いますね。

06:13
質問

僕、間違っていました。羽生さんはアスリートとして極めたから、アーティストとして、という切り替えがあって、そこに深さがあるのではと思っていたんです。でも、アスリートとしてもっと高みを目指している。

羽生:(笑)164kmはだいぶ横に置いておきたい、だいぶ遠くに置いておきたいです。根っからスポ根なので、間違いなく。それを忘れちゃいかんですよ。どっちかになっちゃうんですよ、みんな。ジャンプを飛びたいからジャンプの練習をするし、でもジャンプの練習ばっかりしていると他のところがどんどんダメになっていく。その経験は僕もあって。ただ、やっぱりプロなので。表現面でちょっと進化したなと思われると、アスリート面はもう諦めたのかなと思われがちなんですけど、それは同時進行で、今めちゃくちゃ頑張っている最中です。

会場のエネルギーと表現の厳しさ

07:35
質問

今回、会場に来ていただいた方々が、本当にエネルギーをもらうんだ、勇気をもらうんだ、元気をもらうんだと言っていたんですけど。

羽生:そらそうですよ。甘くないんですよ、そんなものじゃなかった。表現に特化しようと思ったら、顔面がこんなにボロボロになったりしないんですよ。しないんですよね。だからこそ、そう、大変なんです。

次回公演の構想

08:12
羽生結弦

羽生:構想はできているんですけど、まだ音楽が決まっているわけでもないですし。でも今回、前日として滑らせていただいた演目が、1回も袖幕に戻らずに、もう25分間ほぼずっとリンク上に乗り続けるということをやっていて。もちろんスピンだったりステップだったりがメインに見えるんですけど、実は2回転のジャンプであったり、1回転のジャンプ、1回転半、2回転半とかのジャンプを、ちょっと複雑に、ジャンプらしくなく組み込んでいたりする。テクニカルな部分は見えないように、しれっと入れることをいろいろやるんです。「フィギュアってジャンプとかテクニカルだよね」という感覚と、あとバレエとか舞台、演劇にあんまり興味がなかったよという方でも、また新しいジャンルとしてどっちも入っている。改めて新しいジャンルを立ち上げて「これだな」という感覚は、手応えとしてちょっとだけあります。

09:44
質問

次回のもの、まだまだとおっしゃっていますが、何%ぐらいまで来ているという表現はできるものですかね?

羽生:0.1%ぐらいです。頭の中で出来上がりはしているものが1つあるんですけど、それをこれからどう形にしていくかは、これから決めていくところなので。今回得られた手応えや可能性、見てくださった方々の感想も含めて、どういう風に進んでいくべきなのか、何ができるか、もっと面白いことができないかというのを、どんどん探しているところだと思いますし。僕自身もどんどん挑戦したい人間なので、アスリートとしてすごく強いところもどんどん出していきたい、うまくなりたいという、本当に成長段階なんです。全部統合して、最終的に「この形になったんだね」と、いつかはなると思います。

宮城のゆかりの地と地元への思い

10:53
質問

宮城の中でのゆかりで言うと、柚葉桜だとかベルサンピアとか、たくさんの方々がいらっしゃっていますよね。地元に羽生さんのゆかりの地を追いかけてたくさんの方々が来てくれることについて、今どのように思われますか?

羽生:やっぱり率直に嬉しいですよね。自分もSNSを見たりするので、「やっと柚葉桜が咲いてくれている」とか、そういうのを見てちょっとほっこりとかしていましたね。地元のアピールって、正直すごく難しいなといろんなニュースを見ても思うんです。僕が行ったから行きますとか、僕が関わったからそこに行ってみたいと思いますとか、そういう自発的な行動を促す権利を与えていただいたからこそ、宮城県民として誇らしい、誇ってもらえるような人間でありたいなと、背筋が伸びる思いではいますね。

12:33
質問

そういう真の部分から地元を思うようになったきっかけのようなものはありますか?

羽生:ないです。ここに生まれたから、それだけ。でも、もしかしてもう1個あるとしたら、僕が震災の時にアイスショーで点々としている時期は、仙台にいられる期間がすごく短かったので。自分自身が被災地から逃げてしまったんじゃないかみたいな気持ちももちろんありましたし。2012年にカナダのトロントに練習拠点を1回移しているんですけど、その時もやっぱり、地元から離れてしまったことによって、地元への思いというものは強くなったのかなと思っています。

13:50
羽生結弦

羽生:やっぱり地元が大好きなので。ここにはたくさんいいところがあるし、この場所じゃないと味わえない都会の感じと緑の感じ、そして四季の感覚。雪もそんなに降るわけじゃないし、夏もそんなに暑くもない——最近は暑くなっちゃいましたけど。梅雨もそんなに雨がめちゃくちゃ降るわけでもないし、割と過ごしやすいところじゃないですか。そこに住んでいる人たちの穏やかさも、とてもいいものなので。この雰囲気だけでも味わっていただけたら嬉しいし、僕がきっかけでいろんなところにお金が回って、県内が潤ってくれたら、それに越したことはないです。

まとめ

約1シーズンぶりの単独公演を終えたばかりの羽生結弦さんが、体の状態や表現とアスリートの両立について、これほど具体的に語る機会は多くありません。メンテナンス期間を「至るところに爆弾があった」と振り返りつつ、そこでの学びから「肉体のピークはまだある」と前を向く姿には、探究を止めない人の強さがにじみます。

聞き手が同じ仙台市出身で元プロ野球選手の江尻慎太郎さんということもあり、「164km」「二刀流」といった野球の言葉を交えた掛け合いが随所に生まれています。互いに競技を極めた者同士だからこそ届く問いと答えが、このインタビューの見どころです。

後半の宮城への思いも印象的です。ゆかりの地を訪ねるファンへの感謝、震災やトロント移転を経て強まった郷土愛、そして「県内が潤ってくれたら」という願い。25分間リンクに立ち続ける新ジャンルの構想も含め、次の羽生さんが何を見せてくれるのか、期待が高まる内容になっています。